ベトナムで日本の即席ラーメン戦争が勃発しそうだ。ベトナムの即席麺市場はエースコックのシェアが飛びぬけて高いが、日清食品ホールディングス(HD)が昨夏、同国南部の子会社工場でノンフライ麺の製造を開始した。平均年齢が低く“若い”ベトナムは消費市場としての成長が見込まれるためだ。中国一極集中を回避する“チャイナプラスワン”が取り沙汰される中、ベトナムに目を向ける日本企業が増えるかもしれない。

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 お金持ちの娘がラーメンを食べながら、しきりにため息。そこで父親が部下に指令を出し、おいしいラーメンを探させる。やがてラーメンを積んだトレーラーがヘリコプターで空輸され、娘はご満悦。トレーラーの車体には「日清」のマークが。ベトナムの南部地域で、こんなCMが流れている。日本企業のベトナムでの即席麺市場参入、エースコックが1993年に、他社に先駆けて現地法人を設立し、65%ものシェアを持つ。約20年遅れで日清が参入した理由はなにか。

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 世界ラーメン協会の資料によると、2011年のベトナムの即席麺売り上げは49億食で世界4位。3位の日本(55億食)に迫っており、即席麺はいわば国民食だ。また、ベトナムの人口は約9千万人で、平均年齢が約28歳と、国民が非常に若い国だ。

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 ベトナムは海外からの投資で経済成長を続けてきたこともあり、日清は「所得を消費に向ける若者が経済発展で多忙になれば、調理が簡単な即席麺の需要がさらに高まるはず」と、マーケット展望を理由にあげている。親日性が高いとされるベトナムでは、日本製品への信頼も高い。1990年代、ドイモイ(刷新)政策を受けてベトナムの自由経済化が進んだ際、日本から輸入したバイクが大流行。丈夫さ、使いやすさが評価され、バイクがすべて「ホンダ」と呼ばれた時期があったという。

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 文化面でも日本食が身近になっており、日本食を提供するレストランや総菜店のほか、回転寿司や鍋料理が流行している。ベトナムでは食の安全にかかわる問題が後を絶たない。食肉の重量水増し、見た目をよくするための着色など、さまざまな問題が浮上し、消費者側も敏感になっている。政府開発援助(ODA)やバイクだけではなく、食も日本への信頼を高めているのかもしれない。

 「基本的に新しいもの好きな国民性に、品質の高い日本製品が受けている」。昨年ベトナムに渡航した女性会社員はこんな感想を話した。

 ベトナムの歴史を振り返ると、1975年のサイゴン陥落でベトナム戦争が終結するまで長い戦乱にあったが、日本と同じように戦後にベビーブームが起きており、30歳前後の人口が一番多く、65歳以上は5・5%。一定の年齢層が極端に少ないのはベトナム戦争の影響だが、この構成が消費者層の厚さを予感させ、ベトナム国内市場の将来性として評価されている。若い世代が多いだけに第2次ベビーブームも起こりうる。

 ベトナムはインフレ、ストライキなどで人件費が高騰し、足元で10%台のインフレ率を示したこともある。「中国などより人件費はまだ低いが、これまで外資を呼び込んでいた労働力の廉価さが、いつまでもつかは分からない」(中小企業整備基盤機構)との指摘もある。しかし消費市場として見れば、ベトナムには高度成長への期待、マーケットの将来性など、まだ魅力がありそうだ。チャイナプラスワンを考える日本企業は、ベトナムの見方を生産基地から販売市場へと変える時期にきているのかもしれない。

(平岡康彦) SankeiBiz 2013/1/3 14:18
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130103-00000503-biz_san-nb&p=2