2012年8月に明治が発売した1個200円を超えるプレミアムアイスクリーム「meiji THE PREMIUM
Gran」(以下、グラン)が発売当初の販売計画を大きく上回り、一時販売休止に(11月12日に販売再開)。ファミリーマートが5月に発売したPB(プ
ライベートブランド)の「ジェラート」(250円)も4カ月で約400万個を販売するなど、単価の高い「プレミアムアイス」が好調だ。
日本アイスクリーム協会のデータによると、アイスの販売金額はここ10年でじわじわと増えており、2010年、2011年には4000億円を突破。 2012年も前年並みの数字が見込まれている。アイスの売り上げは天候要因が大きいものの、販売金額が伸びている理由は商品単価が上がっていること、新た な購買層を開拓していることが大きいと予想される。
不況といわれるなか、なぜ今「プレミアムアイス」が人気なのか。
価値観の変化に着目、“事実”で勝負する「グラン」
グランを発売した明治はプレミアムアイスブランドとして「aya」を20年前から展開してきた。だたプレミアムアイス市場はハーゲンダッツのひとり勝ち状態で、同ブランドの売り上げは右肩下がりだったという。「何かしないとプレミアムアイス市場で生き残れないと考えた」(明治 アイスクリーム事業部 宮本健太郎氏)。
同社ではプレミアムアイスにおける重視度、満足度を調査し、重視されていながらもその期待が最も満たされていない項目として「ミルクの多い味」に着目。同社の得意分野でもある「ミルク」のおいしさを前面に出した新シリーズとしてグランを投入した。
さらに、消費者のプレミアム=贅沢に求める価値感の変化にも着目。「近年は消費者の間で『失敗したくない』という意識が強く、贅沢品でも世界観より中身 を重視される」(宮本氏)。そこで、ミルクのおいしさの根拠として「無脂乳固形分13%」をアピール。無脂乳固形分とは乳脂肪分を抜いた乳成分でこれを強 化するとえぐみが出るが、独自の製法で塩味を抑えながら濃厚なミルクのコクを出したという。“事実”で勝負しているわけだ。
価格は店舗によって異なるが、ハーゲンダッツとほぼ同等。ターゲットは30~40代女性で、テレビCMを中心に展開しつつ「土日に店頭での試食販売を積極的に行い、おいしさを実感してもらう」(同)という。
“大人““1人の時間”をターゲットにした「パルム」
2005年に発売され、2011年に売り上げ100億円を突破するなど、成長著しいのが「パルム」(森永乳業)。「アイス全体で100億円を超えるブランドは5つしかなく、発売から7年という短期間での達成は例がないのでは」(森永乳業 冷菓事業部 佐々木正春冷菓マーケティンググループ長)。2012年4~9月も前年比140%と好調だ。
マルチパックからスタートしたパルムは一般的なアイスよりは高いものの、ハーゲンダッツよりは手ごろな価格でありながら、乳固形分15%以上、乳脂肪分 8%以上という「アイスクリーム」の基準を満たすのが特徴(「パルム ピュレコーティング オレンジ&バニラ」を除く)。
一貫してターゲットにしているのが「大人」。「少子化・高齢化のなかで、アイスも大人マーケットを取っていかざるをえない。しかしスタートした7年前は 小売店に売り込んでも『大人がアイスを食べるのか?』と言われた」(同)。しかし、ベテラン俳優の寺尾 聰がパルムを食べるテレビCMが話題となり、「大人の男性でも人前で堂々とアイスを食べてもいいんだ」という意識が広がった。
さらに「リーマンショック後、消費者のお金の使い方が変わった。そこで『日常のちょっとした贅沢』を狙おうと決めた」(同)。同社では「デイリープレミアム」を前面に打ち出し、コミュニケーションを展開。そのなかでポイントとしているのが「1人の時間」だ。
「今までアイスといえばみんなでワイワイ食べるイメージだったが、パルムのコンセプトは自分のためだけに使える時間をサポートすること」(同)。1日の中で気が抜ける、自分ひとりだけの時間を楽しむことをマス広告やウェブサイトなどで訴求している。
従来のマルチパックはファミリーユースが中心だったが、パルムでは単身者を含む30~50代が多いという。「マルチパックは家族で分け合って食べるのが 一般的だが、パルムの場合は『いつでも食べられるように家に置いておきたい』という理由でマルチパックを買う若い女性も多い」(同)。
一方、2009年に発売した1本売りタイプの購入者は男性が比較的多い。マルチパックは1本あたりの量が55~60mlと少なく女性が食べやすい量なの に対し、1本売りタイプは量が多い。「『マルチパックだと1本では物足りないが、2本食べるのははばかられる』という男性の声があった」(同)という。
定番志向強まるなか、王者・ハーゲンダッツは“贅沢体験”を売る
プレミアムアイス市場を独占するハーゲンダッツハーゲンダッツも2012年1~10月の売り上げが昨対比110%と上向いている。「消費者の間で定番志向が強まり、ブ ランドとして長年支持されている安心感が受けている」(ハーゲンダッツ ジャパン マーケティング本部 企画グループの大熊康浩マネージャー)。
同社では2011年4月からテレビCMなどの広告コミュニケーションを大きく変更。20代をターゲットに若者の「ハードルが高い」「ハレの日だけ」とい うイメージを変えるべく、外国人モデルを使った高級感を前面に打ち出したものから、若手女優の柴咲コウを起用した身近な食シーンを提案するものに変わっ た。
これと同時にスタートしたのが「ちょっと待ってから食べて」「大きなスプーンで食べてみて」などといった食べごろ、食べ方の提案。ハーゲンダッツの濃厚 さやリッチ感といったおいしい理由を実感してもらうことを主眼としたもので、実際に試した人の感想や写真などがツイッターやフェイスブックなどに盛んに アップされているという。
さらにこの12月には、昨年11月に1都7県で限定発売した「オペラ」を全国のコンビニエンスストアで発売。400円台の“超プレミアムアイス”でさらなる高級感を演出する。
ライバルは「コンビニスイーツ」!?
長年、ブランド力と本格感、豊富なフレーバーでプレミアムアイス市場を独占してきたハーゲンダッツに対し、ミルクのおいしさを前面に出して挑むグラン。一方、パルムは手ごろな“デイリープレミアムアイス”市場を開拓するなど、プレミアムアイス市場は活気づいている。
興味深いのは、いずれのメーカーも「ライバルはコンビニスイーツ」と考えていること。コンビニスイーツの品質がアップするなか、それに対する危機感の強さもプレミアムアイス活況の要因になっているようだ。
(文/山下奉仁=日経トレンディネット)
nikkei TRENDYnet 11月20日(火)11時4分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121120-00000000-trendy-ind
明治 THE PREMIUM Gran グランミルク&手摘みいちご 121ml ×6個【明治】【アイスクリーム】【冷凍】 価格:1,740円 |
日本アイスクリーム協会のデータによると、アイスの販売金額はここ10年でじわじわと増えており、2010年、2011年には4000億円を突破。 2012年も前年並みの数字が見込まれている。アイスの売り上げは天候要因が大きいものの、販売金額が伸びている理由は商品単価が上がっていること、新た な購買層を開拓していることが大きいと予想される。
不況といわれるなか、なぜ今「プレミアムアイス」が人気なのか。
価値観の変化に着目、“事実”で勝負する「グラン」
グランを発売した明治はプレミアムアイスブランドとして「aya」を20年前から展開してきた。だたプレミアムアイス市場はハーゲンダッツのひとり勝ち状態で、同ブランドの売り上げは右肩下がりだったという。「何かしないとプレミアムアイス市場で生き残れないと考えた」(明治 アイスクリーム事業部 宮本健太郎氏)。
同社ではプレミアムアイスにおける重視度、満足度を調査し、重視されていながらもその期待が最も満たされていない項目として「ミルクの多い味」に着目。同社の得意分野でもある「ミルク」のおいしさを前面に出した新シリーズとしてグランを投入した。
さらに、消費者のプレミアム=贅沢に求める価値感の変化にも着目。「近年は消費者の間で『失敗したくない』という意識が強く、贅沢品でも世界観より中身 を重視される」(宮本氏)。そこで、ミルクのおいしさの根拠として「無脂乳固形分13%」をアピール。無脂乳固形分とは乳脂肪分を抜いた乳成分でこれを強 化するとえぐみが出るが、独自の製法で塩味を抑えながら濃厚なミルクのコクを出したという。“事実”で勝負しているわけだ。
価格は店舗によって異なるが、ハーゲンダッツとほぼ同等。ターゲットは30~40代女性で、テレビCMを中心に展開しつつ「土日に店頭での試食販売を積極的に行い、おいしさを実感してもらう」(同)という。
“大人““1人の時間”をターゲットにした「パルム」
2005年に発売され、2011年に売り上げ100億円を突破するなど、成長著しいのが「パルム」(森永乳業)。「アイス全体で100億円を超えるブランドは5つしかなく、発売から7年という短期間での達成は例がないのでは」(森永乳業 冷菓事業部 佐々木正春冷菓マーケティンググループ長)。2012年4~9月も前年比140%と好調だ。
【20%OFF】森永乳業 PARMパルムチョコレートバー 6入 価格:1,915円 |
マルチパックからスタートしたパルムは一般的なアイスよりは高いものの、ハーゲンダッツよりは手ごろな価格でありながら、乳固形分15%以上、乳脂肪分 8%以上という「アイスクリーム」の基準を満たすのが特徴(「パルム ピュレコーティング オレンジ&バニラ」を除く)。
一貫してターゲットにしているのが「大人」。「少子化・高齢化のなかで、アイスも大人マーケットを取っていかざるをえない。しかしスタートした7年前は 小売店に売り込んでも『大人がアイスを食べるのか?』と言われた」(同)。しかし、ベテラン俳優の寺尾 聰がパルムを食べるテレビCMが話題となり、「大人の男性でも人前で堂々とアイスを食べてもいいんだ」という意識が広がった。
さらに「リーマンショック後、消費者のお金の使い方が変わった。そこで『日常のちょっとした贅沢』を狙おうと決めた」(同)。同社では「デイリープレミアム」を前面に打ち出し、コミュニケーションを展開。そのなかでポイントとしているのが「1人の時間」だ。
「今までアイスといえばみんなでワイワイ食べるイメージだったが、パルムのコンセプトは自分のためだけに使える時間をサポートすること」(同)。1日の中で気が抜ける、自分ひとりだけの時間を楽しむことをマス広告やウェブサイトなどで訴求している。
従来のマルチパックはファミリーユースが中心だったが、パルムでは単身者を含む30~50代が多いという。「マルチパックは家族で分け合って食べるのが 一般的だが、パルムの場合は『いつでも食べられるように家に置いておきたい』という理由でマルチパックを買う若い女性も多い」(同)。
一方、2009年に発売した1本売りタイプの購入者は男性が比較的多い。マルチパックは1本あたりの量が55~60mlと少なく女性が食べやすい量なの に対し、1本売りタイプは量が多い。「『マルチパックだと1本では物足りないが、2本食べるのははばかられる』という男性の声があった」(同)という。
定番志向強まるなか、王者・ハーゲンダッツは“贅沢体験”を売る
プレミアムアイス市場を独占するハーゲンダッツハーゲンダッツも2012年1~10月の売り上げが昨対比110%と上向いている。「消費者の間で定番志向が強まり、ブ ランドとして長年支持されている安心感が受けている」(ハーゲンダッツ ジャパン マーケティング本部 企画グループの大熊康浩マネージャー)。
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同社では2011年4月からテレビCMなどの広告コミュニケーションを大きく変更。20代をターゲットに若者の「ハードルが高い」「ハレの日だけ」とい うイメージを変えるべく、外国人モデルを使った高級感を前面に打ち出したものから、若手女優の柴咲コウを起用した身近な食シーンを提案するものに変わっ た。
これと同時にスタートしたのが「ちょっと待ってから食べて」「大きなスプーンで食べてみて」などといった食べごろ、食べ方の提案。ハーゲンダッツの濃厚 さやリッチ感といったおいしい理由を実感してもらうことを主眼としたもので、実際に試した人の感想や写真などがツイッターやフェイスブックなどに盛んに アップされているという。
さらにこの12月には、昨年11月に1都7県で限定発売した「オペラ」を全国のコンビニエンスストアで発売。400円台の“超プレミアムアイス”でさらなる高級感を演出する。
ライバルは「コンビニスイーツ」!?
長年、ブランド力と本格感、豊富なフレーバーでプレミアムアイス市場を独占してきたハーゲンダッツに対し、ミルクのおいしさを前面に出して挑むグラン。一方、パルムは手ごろな“デイリープレミアムアイス”市場を開拓するなど、プレミアムアイス市場は活気づいている。
興味深いのは、いずれのメーカーも「ライバルはコンビニスイーツ」と考えていること。コンビニスイーツの品質がアップするなか、それに対する危機感の強さもプレミアムアイス活況の要因になっているようだ。
(文/山下奉仁=日経トレンディネット)
nikkei TRENDYnet 11月20日(火)11時4分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121120-00000000-trendy-ind