牛丼にハンバーガーに回転寿司。早さが売りのファストフードは私たちの生活にもすっかり定着しましたが、今度はその「早さ」に逆行する商品が登場しました。「ゆっくりと」楽しんで貰おうという新しい発想の新商品が誕生したその理由はなんでしょうか。

 大手牛丼チェーン・吉野家が発表した新しい商品は丼ではなく・・・一人用の鉄鍋に並ぶのは牛肉と野菜、そして豆腐。この鍋を卓上コンロに乗せてカウンターの客に提供します。

 吉野家と言えば「うまい、やすい、はやい」が基本コンセプト。しかし、この鍋は出されてから食べ終わるまで時間がかかります。

 「それでは、実際に測ってみたいと思います・・・ご馳走様でした。食べ終わるまでにかかった時間は、11分8秒でした」(記者)

 吉野家によりますと、普通の牛丼の場合、注文から食べ終わるまでおよそ6、7分。ところが、この鍋は、15分から20分とおよそ3倍の時間がかかるうえ、牛丼のようにかき込んで食べるわけにもいきません。早さが売りの牛丼店がなぜ、あえて時間のかかるメニューを投入するのでしょうか。

 「落ち着いて召し上がりたい方々にも、ご用意あると。新しい価値を提供する。“うまい・やすい・ごゆっくり”です」(吉野家 安部修仁社長)

 4月に牛丼の値下げに踏み切ったものの、客足が思うように伸びなかった吉野家。付加価値のあるメニューを導入することで、新たな客層を開拓する狙いです。

 「『ファスト』フードで時間を『ゆっくり』使ってもらおう」

この逆転の発想は、こんなお店でも。東京都内の回転寿司店。

 「イカに、マグロに、そしてこちらは・・・コーヒー??」(記者)

 大手回転寿司チェーン・くら寿司が2日から販売し始めたのは入れたてのコーヒー。1台100万円のコーヒーマシーンで注文を受けてから豆を挽き、専用のレーンで流して届けるシステムです。回転寿司業界では「客の回転が悪くなる」としてコーヒーなどのメニューは敬遠されてきました。しかし、消費者の好みの多様化に合わせてデザートメニューを揃える内にコーヒーを求める声が増えてきたそうです。

 「意外な組み合わせだなと。(デザートで)ケーキとか食べるときに一緒にいいかな」(利用客)

 「コーヒー自体がもともと客の要望が多かった。本格的なものを販売すれば、客は喜んでくれる」(くら寿司広報宣伝部 辻明宏マネージャー)

 「早さ」を売りに成長を続けてきたファストフード。その特長を真っ向から否定するかのような新しい商法について専門家は・・・。

 「高齢者の多い社会になってきたので、若い世代が数が少なくなりなかなか商売が難しい。単に安いだけでは客は満足しない。もっと本当においしい価値ある物を、どの品目でも追求していかないと」(フードサービスコンサルティング藤居事務所 藤居譲太郎社長)

 その名に逆行するかのようなファストフードの「ごゆっくり」戦略は定着するのでしょうか。(02日16:31)
TBS系(JNN) 12月2日(月)20時13分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20131202-00000041-jnn-bus_all